逮捕の概要
大阪府警は2026年9月9日、20代の女性2人を福岡県と広島県の店舗型性風俗店に紹介したとして、職業安定法違反の疑いでスカウトグループのメンバーの男3人を逮捕したことを明らかにした。同日、MBSニュース(毎日放送)、関西テレビ、読売テレビ、ABCニュース(朝日放送)が相次いで報じた。
報道によると、逮捕されたのは次の人物である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 容疑者 | 林孝平容疑者(34)=大阪市西区、無職/大山剛志容疑者(32)=千葉県市川市、無職/ほか男1人 |
| 罪名 | 職業安定法違反(公衆衛生・公衆道徳上有害な業務への職業紹介) |
| 容疑の時期 | 2025年9〜10月ごろ |
| 対象 | 大阪府などに住む当時20代の女性2人 |
| 紹介先 | 福岡県・広島県の店舗型性風俗店 |
| 手段 | SNSで店側とやりとりしていたとみられる |
| 認否 | 警察は3人いずれの認否も明らかにしていない |
警察は、3人が店側から紹介料を受け取っていたかどうかについても調べているとされる。報じられている事実関係は捜査段階のものであり、逮捕は容疑の段階にとどまる。起訴や有罪が確定したものではない。
「ナチュラル」との関連を視野に
各局が一致して伝えているのは、警察が国内最大規模の違法スカウトグループ「ナチュラル」との関連を視野に入れて捜査しているという点である。押収したスマートフォンを解析するなどして、組織との関係を慎重に調べているという。
ただし、この段階で報じられているのは「関連を視野に捜査している」という捜査方針にとどまる。3人がナチュラルの構成員であると断定されたわけではなく、組織的な指示があったかどうかも明らかになっていない。
大阪から福岡・広島へ——遠隔地への動線
今回の容疑で目を引くのは、紹介先が地元の大阪ではなく福岡県と広島県だという点である。
大阪府などに住む女性を、数百キロ離れた他県の店に紹介する。この構図は、業界で「出稼ぎ」と呼ばれる働き方と重なる。地元を離れて短期間集中的に働く形態は、以前から性風俗産業の一部で定着してきたものだが、スカウト側から見れば、女性の生活圏と勤務先を切り離すことで、周囲の目や引き止めが働きにくい状況をつくり出すことにもなる。
紹介先が「店舗型」であることも押さえておきたい。デリバリーヘルスのような無店舗型と異なり、店舗型性風俗特殊営業は営業所を届け出て構える形態で、多くは地域ごとに集積している。遠隔地の店舗型店へ人を送り込む動線は、全国にネットワークを持つスカウト組織でなければ成立しにくい。
SNSという証跡
もう一つの特徴は、店側とのやりとりがSNSで行われていたとみられる点である。
職業安定法違反の立件では、「誰が」「どの店に」「有害な業務に就かせる目的で」紹介したのかを示す必要がある。路上での声かけと現金のやりとりだけで完結していれば、この立証は容易ではない。一方、SNS上の交渉は、日時と相手方を伴う記録として端末やサーバーに残る。
警察が押収したスマートフォンの解析を捜査の柱に据えているのは、この性質に沿った動きといえる。同時にそれは、スカウト側が業務効率のために選んだ連絡手段が、そのまま証拠になりうるという構造も示している。
「ナチュラル」をめぐる摘発の経緯
ナチュラルは、路上やSNSで女性に声をかけ、全国の性風俗店などに紹介してきたとされる違法スカウトグループである。報道によると、所属メンバーは約1500人に上り、女性の紹介料などで年間約50億円を売り上げていたとみられている。
同グループをめぐる摘発は、この2年で組織の中枢に及んでいる。
- 2025年7月17日――大阪府警が、大阪エリアを統括していたとされる田中優晃容疑者(27)ら男4人を職業安定法違反の疑いで逮捕。被害女性は100人以上に上るとみられると報じられた。
- 2026年1月――指名手配されていた会長の小畑寛昭被告(41)が逮捕。5月の初公判で起訴内容を認めた。
- 2026年6月11日――ナンバー2で統括役とされる榎本悠人容疑者(35)を、警視庁と千葉県警の合同捜査本部が逮捕。
つまり、大阪エリアの統括役は1年以上前に、会長とナンバー2も今年前半までに摘発されている。それでもなお、末端メンバーによる個別の紹介行為をめぐる立件が続いているのが現状である。
背景
職業安定法63条2号は、公衆衛生または公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介などを行った場合を処罰対象としており、法定刑は1年以上10年以下の拘禁刑、または20万円以上300万円以下の罰金と定められている。窃盗や詐欺と比べても下限が重く設定された規定であり、女性を性風俗店に紹介する行為は近年、この条文で摘発されるケースが増えてきた。
さらに2025年6月28日には、性風俗店がスカウトに紹介料(いわゆる「スカウトバック」)を支払うこと自体を禁じる改正風営法が施行された。今回の容疑事実とされる2025年9〜10月は、この施行後の時期にあたる。
もっとも、施行から1年が経った現在も、現場の構造が変わったとは言い切れない。2026年9月11日にFRIDAYが配信した記事では、禁止後も多くの店が支払いを続け、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)側が「顧問料」の名目で追加の支払いを求めているとの業界関係者の証言が伝えられている。現金でのやりとりが中心となれば、資金の流れは捕捉しにくくなる。
組織の頭を押さえても、路上とSNSで女性に声をかける担い手は残る。紹介先を遠隔地に取り、連絡をSNSに移し、金の受け渡しを現金に戻す——今回の事件で報じられた断片は、規制の強化に対して現場がどう形を変えているかを示す材料でもある。捜査が組織との関連をどこまで解明できるかが、次の焦点となる。
本記事はMBSニュース(毎日放送)、関西テレビ、読売テレビ、ABCニュース(朝日放送)、日本経済新聞、時事通信等の報道をもとに構成しています。