逮捕の概要
警視庁などは2026年6月11日、国内最大級とされる風俗スカウトグループ「ナチュラル」のナンバー2で運営部門の統括役とみられる榎本悠人容疑者(35)=東京都練馬区=を、職業安定法違反(有害業務目的の紹介)の疑いで逮捕した。日本経済新聞、時事通信、共同通信、朝日新聞、東日本放送(khb)などが報じた。
報道によると、逮捕したのは警視庁(暴力団対策課)と千葉県警による合同捜査本部。榎本容疑者は会長の小畑寛昭被告(41)に次ぐ「ナンバー2」の立場で、組織全体を統括していたとみられている。
容疑の内容
榎本容疑者の逮捕容疑は、共謀のうえ、2023年9〜11月ごろ、不特定多数の男性客に性的サービスを提供させる目的で、20代の女性を群馬県高崎市の性風俗店にあっせんしたとされるもの。職業安定法は、公衆衛生・公衆道徳上有害な業務に就かせる目的での職業紹介を禁じており、無許可で女性を性風俗店に紹介する行為がこれに問われている。
報道で伝えられている事実関係は捜査段階のものであり、逮捕は容疑の段階にとどまる。起訴・有罪が確定したものではない。
逮捕までの経緯
捜査本部は榎本容疑者を4月から指名手配していた。6月10日、「大阪・梅田のパチンコ店に似た人物が出入りしている」との情報が寄せられ、翌11日午後、捜査員が店内で本人を発見して逮捕に至ったという。報道では、逮捕時に多額の現金を所持していたと伝えられている。
潜伏先での確保という経緯は、組織の中枢メンバーが摘発を逃れて各地を移動していた可能性をうかがわせる。
「ナチュラル」という組織
「ナチュラル」は、路上やSNSで声をかけて女性をスカウトし、全国の性風俗店に紹介するビジネスを展開してきたとされる、国内最大級の違法スカウトグループである。報道によると、組織は会社のような体制で運営され、派遣先となる風俗店を開拓する「契約課」、スカウト用アプリを管理する「アプリ課」などの部門に分かれていたという。榎本容疑者は、これら各部門を束ねる統括役だったとみられている。
捜査関係者の見立てとして、グループは女性の紹介料などで年間数十億円規模の違法収益を得ており、その一部が暴力団に流れていたとの指摘も報じられている。これらの収益規模・資金の流れについては、なお捜査で解明が進められている段階であり、断定はできない。
組織中枢に及ぶ摘発
「ナチュラル」をめぐっては、捜査が段階的に組織の中枢へと迫ってきた。
- 2025年11月――東京地裁は、グループの幹部・実行役ら3人に有罪判決を言い渡した。主犯格の男には懲役3年6か月の実刑が下された。
- 2026年1月――指名手配されていたトップの小畑寛昭被告(41)が逮捕された。
- 2026年5月――小畑被告の初公判が東京地裁で開かれ、被告は起訴内容を認めた。検察側は、2009年ごろからのグループの実態を冒頭陳述で明らかにしている。
- 2026年6月――今回、ナンバー2の榎本容疑者が逮捕された。
トップに続いて統括役が摘発されたことで、組織運営の実態解明がさらに進むかが焦点となる。
背景――「会社化」する違法スカウト
近年摘発が相次ぐ違法スカウトグループに共通するのは、犯罪組織でありながら「会社」のように分業・効率化された運営体制である。担当部門を分け、アプリやSNSを使って女性を集め、紹介先の風俗店を開拓する――こうした構造は、個人の犯行とは比較にならない規模で女性を性風俗産業へ送り込む装置として機能してきた。
その入り口にあるのが、ホストクラブの売掛金(ツケ)や生活苦などで金銭的に追い詰められた女性たちである。スカウト側は、そうした女性に「高収入」を持ちかけて性風俗店へと橋渡しし、紹介料を継続的に得る。2025年6月施行の改正風営法でスカウトバック(性風俗店からスカウトへの紹介料支払い)が禁止されるなど、規制は強化されつつあるが、需要と供給の連鎖を断ち切るには、入り口での搾取構造そのものへの対処が欠かせない。
「ナチュラル」や、同じく摘発された「アクセス」といった大型スカウト組織への一連の捜査は、こうした女性搾取ビジネスの実態を可視化し、首謀者の責任を問う動きの延長線上にある。組織の頂点と中枢が相次いで法廷に立たされることで、違法スカウトに対する司法の姿勢が、より明確に示されていくことになる。
本記事は日本経済新聞、時事通信、共同通信、朝日新聞、東日本放送(khb)等の報道をもとに構成しています。固有の事実は各報道に基づくものであり、食い違う点や未確認の点は本文中で留保しています。逮捕は容疑の段階であり、有罪が確定したものではありません。