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「風営法改正は失敗」 禁止されたスカウトバックが「顧問料」名目で高騰か 施行1年余の現場をFRIDAYが報道

性風俗店がスカウトに紹介料を支払う「スカウトバック」を禁じた改正風営法の施行から1年余りが経ったが、業界内部からは「改正は失敗だった」との声が上がっている。FRIDAY(講談社)が2026年9月11日に配信した記事は、禁止後も多くの店が支払いを続けており、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)側が「顧問料」の名目で追加の支払いを求める動きを活発化させていると伝えた。大手風俗グループ幹部は「東京では過半数の店が、大阪では大手2グループ以外のほとんどの店がトクリュウとの取引を続けている」と語ったという。禁止規定による摘発は2025年7月の熊本での全国初逮捕以降、各地で出ているものの、現金でのやりとりが中心で資金の流れを捕捉しにくいという実務上の壁が指摘されている。

「風営法改正は失敗」 禁止されたスカウトバックが「顧問料」名目で高騰か 施行1年余の現場をFRIDAYが報道

「改正は失敗だった」という業界内部の声

FRIDAY(講談社)は2026年9月11日、改正風営法の施行から1年余りが経った性風俗業界の現状を伝える記事を配信した。同記事によれば、業界関係者からは「改正は失敗だった」という声が聞かれ、改正の目的だった業界の健全化が進むどころか、改正前より事態が悪化しているとの見方が示されているという。

焦点となっているのは、改正で新たに禁じられた「スカウトバック」である。これは、性風俗店が女性の紹介を受けた見返りにスカウト側へ支払う紹介料を指す。ホストクラブの色恋営業などで多額の債務を負わされた女性が、スカウトを介して性風俗店に送り込まれ、継続的に搾取される——この構図を断ち切ることが、禁止規定の狙いだった。

FRIDAYの記事は、禁止されたにもかかわらず多くの店が支払いを続けている理由を、端的に「摘発されないから」と説明する。スカウトバックは現金でのやりとりが中心で、支払い実績などの資金の流れを捕捉することが難しく、それが摘発を困難にしているという。同記事は、摘発・逮捕されているのは「氷山の一角」であり、そのほとんどが「店で働く風俗嬢による通報」というレアケースだとも指摘している。

「顧問料」という名目での上乗せ

さらに同記事が伝えるのは、禁止規定が事実上の値上げを招いたという逆説的な事態である。

警察が摘発対象として重点を置いてきた『ナチュラル』『アクセス』といったトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)系のスカウト集団は、法改正後、「顧問料」の名目で追加のスカウトバックを要求する動きを活発化させているとされる。名目を変えることで紹介料であることを覆い隠しつつ、店側の負担はむしろ増えているという構図だ。

同記事に登場する全国に店舗を展開する大手風俗グループの幹部は、次のように述べたと伝えられている。

東京では過半数の店が、大阪では大手2グループ以外のほとんどの店が、トクリュウとの取引を続けています

法律を無視するトクリュウのスカウトが女性の供給源の中心となり、新規取引が増加している。店側は女性の紹介がなければ経営が立ち行かないため、頼らざるを得ない——というのが同記事の見立てである。これらは業界関係者の証言に基づく記述であり、当サイトとして裏付けを取れた統計ではない点は留保しておく。

禁止規定はどう定められているか

スカウトバックの禁止は、2025年5月20日に参議院本会議で可決・成立し、2025年6月28日に施行された改正風営法によって導入された。制度上の枠組みを整理すると次のとおりである。

項目 内容
根拠条文 風営法28条13項(31条の3第1項で準用)
禁止行為 紹介を受けた店側が、紹介の対価として金銭その他の財産上の利益を提供すること
対象営業 ソープランド(2条6項1号)、店舗型ヘルス(同2号)、デリバリーヘルス(7項1号)
罰則 6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科(53条7号)

ポイントは、規制の向きである。従来から職業安定法63条2項は紹介する側(スカウト)の有害業務職業紹介を処罰対象としてきたが、今回の風営法改正は紹介を受けた店側の支払い行為を処罰対象に加えた。スカウトと店の双方から挟み撃ちにする設計になっている(TMI総合法律事務所の解説による)。

同じ改正では、接待飲食営業者による「客の恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求」(色恋営業)や、威迫・誘惑による売春・性風俗店勤務・AV出演の要求も罰則付きで禁じられた。無許可営業の罰則も、拘禁刑2年以下から5年以下へ、罰金200万円以下から1000万円以下へ、法人の重科は200万円以下から3億円以下へと大幅に引き上げられている(大阪府警の解説による)。

摘発は出ているが、点にとどまる

禁止規定が空文化しているわけではない。適用の実績は積み上がっている。

  • 2025年7月18日:熊本県警が、スカウトに紹介料を渡したとして性風俗店経営者2人を逮捕。禁止規定による全国初の逮捕となった(共同通信)
  • 2026年6月:東京都公安委員会が、豊島区東池袋の性風俗店に120日間の営業停止を命令。スカウトバックを理由とする行政処分は都内初とされた(既報
  • 2026年7月7日:北海道警が、旭川市のソープランド経営者の女(55)を同容疑で逮捕。道内初のケースで、スカウト集団のリーダー格も職業安定法違反容疑で逮捕された(既報

摘発は各地に広がっているが、いずれも個別の店と個別のスカウトを結ぶ「点」の立件である。FRIDAYが「氷山の一角」と表現したのは、この点と面の落差を指している。

背景 人手を握る側が価格を決める

スカウト組織が摘発されても消えない理由については、他媒体も同種の構造を指摘してきた。ダイヤモンド・オンラインは、スカウト組織『ナチュラル』を追った取材をもとに、店とスカウトの間には「持ちつ持たれつ」の相互依存があり、とりわけ地方の店が人材確保をスカウト網に頼り切っている実態を伝えている。山陽新聞も、スカウトに依存する地方の風俗店と、あっせん先が海外にまで及ぶ実情を報じている。

構造を単純化すれば、こうなる。性風俗店にとって最大の制約は集客ではなく人手である。求人媒体からの応募だけでは稼働枠が埋まらない店にとって、女性を連れてくるルートを握る者は、価格交渉で優位に立つ。その紹介ルートが違法化されれば、供給側は法令を守る事業者から、はじめから法を無視している組織へと入れ替わる。残った供給者は競争相手を失い、名目を「顧問料」に変えてでも、より高い対価を要求できる——禁止が値上げを招いたという業界の証言は、この順序で理解できる。

もっとも、「改正は失敗」という結論を急ぐのは早い。行政処分と刑事摘発が出そろったのは2026年に入ってからであり、資金の流れを追う捜査手法が定着するまでには時間がかかる。当サイトがこれまで扱ってきた事案を並べても、スカウトグループ幹部の相次ぐ立件路上スカウトの手口公表など、捜査当局が供給網そのものを削ろうとする動きは続いている。

一方で、現金取引を捕捉できないという指摘は、制度設計の弱点を突いている。支払いの記録が残らない限り、立件は当事者の供述や内部からの通報に依存せざるを得ない。FRIDAYが伝えた「摘発のほとんどが店で働く女性からの通報によるもの」という現場感覚が事実なら、この規定の実効性は、通報しうる立場に置かれた人が声を上げられるかどうかに強く依存していることになる。禁止から1年余り、問われているのは条文の有無ではなく、それを動かす仕組みのほうだろう。

本記事はFRIDAY(講談社)、共同通信、ダイヤモンド・オンライン、山陽新聞、大阪府警察およびTMI総合法律事務所の公表資料・解説等をもとに構成しています。業界関係者の証言部分は各報道の引用であり、当サイトが独自に裏付けたものではありません。