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売春防止法見直しに当事者団体が反発 院内集会で「買う側」処罰と同時に「売る側」非処罰化を要求

法務省の有識者検討会が9月中に報告書をまとめるのを前に、一般社団法人Colaboなどが2026年9月3日、参議院議員会館で院内集会を開いた。報告書案は「買う側」の勧誘行為を新たに規制対象とする一方、「売る側」の罰則は維持する方向とされる。登壇者らは、売る側の罰則が残るかぎり被害を訴え出られないとして、買う側の処罰化と同時に売る側の非処罰化と支援の制度化を求めた。制定70年で初の抜本改正が視野に入るなか、法案の設計をめぐる対立点が表面化した形だ。

売春防止法見直しに当事者団体が反発 院内集会で「買う側」処罰と同時に「売る側」非処罰化を要求

報告書取りまとめ直前の集会

一般社団法人Colabo(コラボ)は2026年9月3日、参議院議員会館で売春防止法の見直しをテーマにした院内集会を開いた。神奈川新聞(カナロコ)と、しんぶん赤旗が報じた。

集会には、Colabo代表理事の仁藤夢乃氏、同理事で弁護士の角田由紀子氏、同理事で法政大学元総長の田中優子氏らが登壇し、性売買を経験した当事者らでつくるネットワーク「灯火」の当事者も発言した。しんぶん赤旗によると、日本共産党の吉良よし子、仁比聡平、山添拓の各参議院議員も参加した。

集会の主張の核心は、両紙の見出しにそのまま表れている。カナロコは「コラボ仁藤代表、『売る側』の非処罰化求める」と伝えた。「買う側」を処罰対象に加えるだけでは足りず、同時に「売る側」の罰則を外さなければならない、という要求である。

何に反発しているのか

背景にあるのは、法務省の有識者検討会「売買春に係る規制の在り方に関する検討会」(座長=北川佳世子・早稲田大学大学院教授)が2026年8月24日の第8回会合で大筋了承した報告書案だ。

報道によると、報告書案の骨格は次の通りである。

論点 報告書案の方向性
買う側の勧誘行為 規制対象に加える(委員の意見はおおむね一致)
売春相手を物色する目的での路上徘徊 規制対象として検討
勧誘等罪の罰金上限 引き上げる方向。拘禁刑は引き上げ不要
売買春の行為そのものの処罰化 「慎重な検討が必要」。地下化と供給側のリスク増を懸念
売る側の罰則 維持(撤廃は方向性として示されていない)

つまり報告書案は、街頭での「勧誘」という可視的な行為について売る側・買う側の非対称を是正する一方、売る側にかかる罰則そのものは残す設計になっている。集会の登壇者らが問題視したのは、この点だ。罰せられる立場に置かれたままでは、暴力や搾取の被害に遭っても警察に相談できず、結果として買う側の責任も問われない——という主張である。

なお、現行の勧誘等罪(売春防止法5条)の法定刑については、時事通信が「6カ月以下の拘禁刑または2万円以下の罰金」、産経新聞が罰金の上限を「2万〜30万円」と伝えるなど報道により記述に幅がある。本記事では具体的な金額を断定しない。

登壇者の発言

しんぶん赤旗によると、仁藤氏は、福祉制度では生活を支えきれず性売買で暮らしを成り立たせている女性がいる実態を指摘し、住居・食事・育児・教育・就労の保障は国の責任だと述べた。処罰の設計以前に、性売買以外の選択肢が現実に存在するかどうかが問われている、という論理である。

角田氏は、金銭によって性行為への同意を取り付け相手を屈服させる性売買を「暴力」だと位置づけた。田中氏は、遊廓・赤線を含む長い歴史のなかで廃止運動が起きるたびに実態が覆い隠されてきたことに触れ、同じことを繰り返すべきではないと警告した。

法改正をめぐる二つの軸

売春防止法の見直し論議は、しばしば「買う側を罰するかどうか」という一本の軸で語られる。しかし実際には、独立した二つの軸がある。

  • 軸1:買う側を処罰対象に加えるか
  • 軸2:売る側の処罰を維持するか、外すか

買う側を罰し売る側を罰しない組み合わせが、いわゆる北欧モデル(スウェーデン型)だ。フランスも2016年にこの方向へ舵を切っている。一方、報告書案が現時点で示しているのは、買う側の勧誘を加えつつ売る側の罰則も残す「双方処罰」に近い形であり、北欧モデルとは異なる。今回の集会は、その差分に対する異議申し立てだった。

もっとも、非処罰化の要求にも論点は残る。売る側の罰則を外した場合に、あっせん業者や店舗側の関与をどう切り分けて立件するか、路上での客待ちに対する現行の取り締まりをどう再設計するかは、いずれも運用上の難問である。検討会が売買春そのものの処罰化に慎重だったのも、規制強化が取引を地下に潜らせ、売る側の安全をかえって損なうという懸念からだった。方向は逆でも、「当事者の安全をどう確保するか」という問いは共通している。

背景

売春防止法は1956年に成立した。戦後の赤線廃止を背景とするこの法律は、売春をする女性を「保護更生」の対象とみなす一方、買う側の男性をほとんど法の視野に入れていなかった。刑事罰の非対称は、この70年前の前提を引き継いだものだ。

その前提と現実の乖離は近年とりわけ大きい。ホストクラブの売掛金を背負った女性が違法スカウトを介して性風俗店に送り込まれる構図が繰り返し摘発され、東京・大久保公園周辺では路上で客待ちをした女性の摘発が続いてきた。摘発されるのは経済的に追い詰められた側であり、需要をつくる側は制度上ほぼ無傷のままだ、という批判が積み重なってきた。2026年に入ってからは、12歳のタイ人少女に性的サービスを強要したとされる事件の衝撃が、見直し議論を後押ししたとも報じられている。

法務省は9月中に報告書をまとめ、秋の臨時国会に改正法案を提出する方向で調整しているとされる。報告書の取りまとめが目前に迫るなかで開かれた今回の集会は、条文の細部が固まる前に、支援団体と当事者の側から設計そのものへ異議を差し込む動きだったと言える。改正が実現すれば、売春防止法は制定70年で初めて罰則の構造に手を入れられることになる。その構造がどちらの側に開かれるのかは、まだ決まっていない。

本記事は神奈川新聞(カナロコ)、しんぶん赤旗、時事通信、産経新聞、朝日新聞等の報道をもとに構成しています。集会での発言内容は報道による要約であり、発言者の肩書きは報道時点のものです。法定刑の金額など報道間で記述が一致しない点は断定を避けています。