報じられた内容
FRIDAYデジタルは2026年8月13日、女性用風俗(いわゆる「女風」)の市場が急速に拡大しているとする記事を配信した。
同記事によると、女性用風俗の情報サイト『Kaikan』に掲載されている店舗・セラピストの数は、2026年7月21日現在で381店舗・5570人。2022年の167店舗・2417人と比べ、いずれも2倍以上に増えている。さらに大手の「秘密基地グループ」「OASIS」を含めると、実際には全国で400〜500店舗、セラピストは約7000人規模とみられる、との推計も紹介されている。
利用の実態については、女性用風俗店「OASIS」新大久保店の店長・桃尻けいこ氏が、利用者層を「20代から50〜60代まで、OLから主婦の方まで本当に幅広い」と説明。「2時間1万円でセラピストに会える『レンタル彼氏』的なデートイベントがかなり好評だった」「『イケメンと飲みたいんですが、誰かいますか?』といった電話も来る」と語っている。料金相場は、施術とデートを組み合わせた180分で3万〜4万円程度とされる。
記事は同時に、セラピストへの「ガチ恋」(本気の恋愛感情)に至る利用者の存在にも触れており、サービスとして提供される親密さと、利用者側の感情のずれが生じやすい構造を指摘している。
店舗数は集計元によって幅がある
もっとも、「女性用風俗が何店あるのか」という数字は、報道によってかなり幅がある。当サイトで確認できた範囲では、次のとおりである。
| 時点 | 数字 | 出典・注記 |
|---|---|---|
| 2022年 | 167店舗・セラピスト2417人 | 『Kaikan』掲載分(FRIDAY・8月13日) |
| 2026年3月 | 全国426店舗 | 『Kaikan』運営者の説明(現代ビジネス・3月31日) |
| 2026年4月 | 全国約350店舗 | 現代ビジネス(6月6日、大泉りか氏の記事) |
| 2026年7月21日 | 381店舗・セラピスト5570人 | 『Kaikan』掲載分(FRIDAY・8月13日) |
| 2026年8月時点の推計 | 400〜500店舗・約7000人 | 大手チェーンを含めた業界推計(同) |
数字が前後するのは、「特定の情報サイトに掲載されている店舗数」と「全国に存在するとみられる店舗数」が混在しているためとみられる。掲載数は媒体との契約や出稿状況で増減するため、市場全体をそのまま表すわけではない。本記事では個々の数字を確定的な市場規模とは扱わず、いずれも報道された推計として扱う。
一方で、複数の報道が一致しているのは、数の水準そのものではなく増加の方向である。2022年から2026年にかけて、掲載ベースで店舗・セラピストとも2倍以上になったという点は、少なくとも情報サイトの掲載データ上は明確に読み取れる。
チェーン単位の規模も報じられている。ABEMA TIMESは2025年8月25日、大手「東京秘密基地」が全国39店舗・総勢500人のキャストを抱え、新規客の問い合わせは1日50件程度、利用者の7割以上が20代の女性だとする創業者側の説明を伝えていた。1グループでこの規模に達していることは、全国400〜500店舗という推計と大きく矛盾しない。
法的には男性向けデリヘルと同じ枠組み
女性用風俗は「新しいサービス」として語られることが多いが、法的な位置づけは特別なものではない。
風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)は、住居や宿泊施設など客の指定する場所に出向いて異性の客に接触する役務を提供する営業を「無店舗型性風俗特殊営業」の第1号(派遣型ファッションヘルス等)と定めている。条文が定めるのは「異性の客」であり、男性セラピストが女性客に接触する形態もここに含まれ得る。
風営法手続きを扱うごたんだ行政書士事務所(高村直氏)の解説でも、女性用風俗店の開業は「基本的には無店舗型性風俗特殊営業の第一号営業」に当たり、事務所の所在地を管轄する公安委員会へ、営業開始の10日前までに届出を行う必要があるとされている。18歳未満を客としないための確認措置なども、男性向けの派遣型店舗と同じ枠組みで求められる。
つまり、届出をして営業する限りは適法な性風俗関連特殊営業であり、届出をせずに営業すれば無届営業として摘発の対象になり得る――という点で、男性向けのデリバリーヘルスと扱いは変わらない。「女性向けだから風営法の外にある」という位置づけではない。
公的統計には女性向けの内訳がない
では、行政の統計で女風の広がりを確認できるかというと、そこには空白がある。
警察庁生活安全局保安課が2026年4月に公表した「令和7年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」によると、令和7年(2025年)末現在の性風俗関連特殊営業の届出数は合計3万4861件。内訳は次のとおりである。
- 店舗型性風俗特殊営業:6474件(うちソープランド等1180件)=継続して減少
- 無店舗型性風俗特殊営業:2万2792件(うち第1号「派遣型ファッションヘルス等」2万1353件)=継続して増加
- 映像送信型性風俗特殊営業:5449件(前年4333件から大幅増)
- 電話異性紹介営業:146件
女性用風俗が該当する第1号は2万1353件だが、この数字に「客が女性である営業」がいくつ含まれるのかは公表されていない。届出の区分は営業形態(無店舗・派遣型)で切られており、客の性別による分類は存在しないためである。
結果として、女風の規模を知る手がかりは民間の情報サイトの掲載数や業界関係者の推計しかない、という状態が続いている。市場が拡大していること自体は各報道が一致して伝えているにもかかわらず、その実数を公的データで裏づけることができない。行政が実態を把握できていない領域が、統計の設計そのものによって生まれている形である。
「相談しにくい」トラブルの構造
拡大の裏側では、利用者側の被害も報じられている。
現代ビジネスは2026年3月31日、女性用風俗をめぐるトラブルを取り上げた記事(山本金太氏)で、セラピストの「ランキングバトル」で勝たせるために予約代金として計118万円を支払った女性が、実際にはサービスを受けられなかったケースを伝えた。この女性は民事訴訟を起こし、勝訴して全額を回収したという。記事では、サービスの放棄だけでなく、身体的な被害を訴える声も紹介されている。
同記事で『Kaikan』運営者は「女風というサービスの性質から何かトラブルが起きても相談しにくいようです」と述べている。利用そのものを周囲に知られたくない客が多く、被害が表沙汰になりにくい――という指摘である。
課金の仕組みにも注目すべき点がある。指名やランキングの順位を競わせ、応援したい客が繰り返し課金するという構造は、悪質ホストクラブ問題で繰り返し指摘されてきた売掛金・シャンパンタワーの構図と相似形である。もっとも、ホストクラブの売掛金問題が「ツケを負わせて性風俗で働かせる」という強制の連鎖に直結していたのに対し、女風の高額課金がどの程度そこまで至っているかは、現時点で体系的なデータがない。この点は今後の取材と統計の課題であり、本記事は同一視しない。
背景
2025年6月に施行された改正風営法は、悪質ホストクラブの売掛金営業やスカウトバックの規制を柱としており、2026年に入ってからも違法スカウトグループやソープランドの摘発が相次いでいる。法務省の有識者検討会では売春防止法の見直しも議論されている。いずれも、女性が「働き手」あるいは「性を売る側」に置かれる構造への対策である。
これに対し、女性が「客」の側にいる女性用風俗は、規制強化の議論の中心にはほとんど登場してこなかった。法的な枠組みは男性向けと共通でありながら、実態を映す統計はなく、被害相談の窓口や業界としてのルールづくりも、男性向け風俗ほど社会的な圧力を受けてこなかった領域である。
ここには二つの当事者がいる。高額な課金や約束されたサービスの不履行にさらされ得る女性の利用者と、性的な役務を提供する労働者としての男性セラピストである。市場が4年で倍増した規模に達したのであれば、いずれの側についても、契約や安全衛生、被害救済をどう設計するかという問いは避けられない。掲載店舗数の増加という数字は、その問いが先送りされたまま量だけが拡大していることを示している。
本記事はFRIDAYデジタル(2026年8月13日)、現代ビジネス(2026年3月31日・6月6日)、ABEMA TIMES(2025年8月25日)の報道、および警察庁生活安全局保安課「令和7年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」(2026年4月公表)、風営法手続きに関する行政書士の解説をもとに構成しています。店舗数・セラピスト数はいずれも報道および業界推計であり、公的に確定した数値ではありません。