逮捕の経緯
北海道警は2026年7月7日、旭川市のソープランド経営者で会社役員の岡部敏子容疑者(55)を、風俗営業法違反(スカウトバックの禁止)の疑いで逮捕した。あわせて、女性をこの店に紹介したとされるスカウトグループ「フライズ」のリーダー格とみられる会社役員の小原大樹容疑者(38)を、職業安定法違反(有害業務の紹介)の疑いで逮捕した。
STVニュース北海道、HTB北海道ニュース、HBC北海道放送、UHB北海道文化放送など各局の報道によると、岡部容疑者は2026年1月20日ごろ、自身が経営する旭川市のソープランドで働く女性を紹介された見返りとして、小原容疑者に現金4万6000円を送金した疑いが持たれている。改正風営法で新たに禁じられた「スカウトバック」の支払いを理由とする逮捕は、北海道内で初めてとされる。
「スカウトバック」とは何か
各社の報道と弁護士らの解説を総合すると、事件の構図は次のように整理できる。
- スカウトバック:スカウトが性風俗店に女性を紹介し、その見返りとして店側がスカウトに支払う紹介料。女性の売上の一定割合が継続的に抜かれる形が問題視されてきた。
- 禁止の根拠:2025年6月28日に施行された改正風営法。紹介を「受ける側」である性風俗店がスカウトへ金銭を支払う行為に、罰則付きで規制がかけられた。
- 今回の位置づけ:この規定に基づく逮捕は北海道内で初。全国では東京・仙台などで先行事例があり、取り締まりが地方へ広がりつつある。
改正法は、女性を紹介する側(スカウト)だけでなく、紹介を受けて金銭を渡す側(店)にも責任を負わせることで、女性を性風俗の現場に送り込み続ける「資金の流れ」を断つことを狙っている。
送金は十数回、計約100万円か
報道によると、岡部容疑者の送金は今回立件された1件にとどまらない。2024年3月ごろから2026年1月ごろまでの間に、小原容疑者に対し少なくとも十数回、計およそ100万円を送っていたとみられている。
調べに対し、岡部容疑者は「スカウトの方から女の子を紹介してもらい、その見返りとして現金を振り込んだことに間違いありません」と容疑を認めているという。一方、紹介側とされる小原容疑者は「弁護士と相談するまでは話すことはありません」と供述していると報じられている。両容疑者の認否や具体的な役割については、今後の捜査と司法の判断を待つ必要がある。
スカウト集団「フライズ」への捜査
小原容疑者は、札幌市・ススキノ地区を拠点に女性をSNSや路上で勧誘していたとされるスカウトグループ「フライズ」のリーダー格とみられている。道警は、今回の逮捕を足がかりに、同グループの組織的な関与や余罪の有無を視野に入れて調べを進めているという。
「フライズ」をめぐっては、2026年に入ってからメンバーとされる複数の男が、女性を無店舗型の性風俗店(デリヘル)などに紹介したとして職業安定法違反の疑いで摘発されたと報じられており、匿名・流動型の犯罪グループ(いわゆる「トクリュウ」)との関連も指摘されている。今回はその紹介先が店舗型のソープランドで、店側の支払い(スカウトバック)が立件対象になった点で、これまでの摘発とは局面が異なる。
背景
スカウトバックが問題視される背景には、悪質ホストクラブの売掛金トラブルなどをきっかけに、女性が性風俗や売春に追い込まれていく構造への懸念がある。スカウトが女性を店に紹介し、店がその見返りを支払う仕組みが、こうした搾取の連鎖を経済的に支えているとみられてきた。
2025年の改正風営法は、この「紹介料の環」に法の網をかけた。施行から1年あまりが経ち、東京都内でのスカウトバックを理由とする行政処分(営業停止)に続いて、地方でも刑事事件としての立件が現実のものになりつつある。今回の道内初逮捕は、規制が繁華街を抱える大都市だけの話ではなく、地方都市のソープ街にも及び始めたことを示す事例といえる。
一方で、立件されているのは「紹介の見返り」という個別の金銭のやり取りであり、どこまでが違法な支払いにあたるのかという線引きや、こうした摘発の積み重ねが業界の慣行をどこまで変えるのかは、今後の運用を見ていく必要がある。
本記事はSTVニュース北海道、HTB北海道ニュース、HBC北海道放送、UHB北海道文化放送、北海道新聞等の報道、および改正風営法に関する弁護士・行政書士の解説をもとに構成しています。氏名・年齢・金額・日付などの固有情報は各報道に基づくもので、個別事案の評価は捜査機関・司法の判断によります。容疑段階の情報を含み、有罪が確定したことを意味するものではありません。