「辿り着くのは、ただひとつのSMクラブ」という看板
Arrest(アレスト) は、鶯谷を拠点にするSMクラブだ。シティヘブンの店舗ページに掲げられたキャッチは「辿り着くのは、ただひとつのSMクラブ」。公式サイトのタイトルには「東京鶯谷 SMクラブ Arrest slave club M女専門店」とあり、コピーライト表記は2010年からになっている。料金表のロゴには「TOKYO SM CLUB / UGUISUDANI SAKASHITA」と添えられていて、鶯谷の「坂下」側を名乗っているのが分かる。
「ただひとつ」という言い方は、広告としてはよくある大げさな表現だ。SMクラブは都内にいくつもあるし、鶯谷にもある。だからこの言葉そのものを信じる理由はない。ただ、こういう看板を掲げる店は、何を根拠に「ただひとつ」と言いたいのかを、どこかに書いているはずだ。それを探すのが今回の検証の枠組みになる。
先に結論めいたことを書くと、根拠らしきものは料金でもプレイ内容の多さでもなく、規約の書き込み量にあった。
立地:南口から3分、根岸の雑居ビル
所在地は台東区根岸3丁目、「新根岸拾番館」の4階。最寄りはJR鶯谷駅の南口で、徒歩3分とされている。営業は12時から24時、受付電話は03-5603-7022。業態はホテヘル、つまり受付を済ませてからホテルで女性と合流する形だ。
鶯谷は、山手線の駅の中でもラブホテルの密度が飛び抜けて高い。北口を出れば言問通り沿いにホテルが並ぶし、南口側も少し歩けば選択肢に困らない。SMクラブにとってこれは大きい。道具を持ち込み、縄を使い、時間を長く取るプレイでは、部屋の広さや清潔さ、壁の厚さが体験を左右する。ホテルの選択肢が多い街に店を構えるのは、SM店としては理にかなっている。
一方で、規約には「浣腸:排泄はトイレでお願いしています。お部屋や無理な場所での排泄行為は、ホテルからクリーニング請求の恐れがありますのでご遠慮ください」という一文がある。ホテルとの関係を店側がかなり気にしていることが読み取れる。鶯谷でホテヘルを長く続けるには、ホテルに嫌われないことが条件になる。2010年から看板を守ってきた店が、この一文を規約に入れていること自体が、一つの情報だ。
料金表を電卓で読む
料金は料金表画像から読み取った。基本の「Sコース 悪戯の時間」は次のとおり。
| 時間 | 料金 | 1分あたり |
|---|---|---|
| 60分 | 25,000円 | 約417円 |
| 90分 | 35,000円 | 約389円 |
| 120分 | 45,000円 | 375円 |
| 150分 | 55,000円 | 約367円 |
| 180分 | 65,000円 | 約361円 |
| 延長30分 | 10,000円 | 約333円 |
これに加えて「豪華な4時間」240分85,000円、「ロングコース10時間」600分185,000円がある。入会金は5,000円、写真指名は無料、予約指名料は2,000円。
30分ごとにきっちり10,000円ずつ上がる、分かりやすい表だ。長くするほど1分あたりは安くなるが、下がり方は緩やかで、60分と180分の差は1分あたり50円ほどしかない。つまり「長いほうが得だから長くする」という作りにはなっていない。時間は、必要な分だけ買えばいいという設計に見える。
シティヘブン側の表記では、SM初心者向けに「初めてのSM エスコートプラン」60分25,000円〜・90分35,000円〜、それに「ご主人さまプラン」90分35,000円〜が並んでいる。金額は基本コースと同じなので、違いは値段ではなく、どういう姿勢で臨むかの入口の違いと読むのが自然だろう。
「200種類以上の道具」と麻縄の扱い
料金表の後半は道具の紹介に割かれている。「200種類以上のSM道具を、ご用意してお待ちしております!」という帯があり、有料オプションには道具ごとの値段が並ぶ。90分以上のコースには、A・B・Cの3グループから選べる無料の「ビギニングオプション」が付く。240分と600分のコースでは、指定の道具群から自由に3項目を選べるとある。
公式サイトのトップで、店がわざわざ書いているのは麻縄のことだ。「SMクラブ アレストでは、縛りには麻縄が利用可能となっています」。無料オプションにも「麻縄追加」が入っている。基本内容の一覧も「縛り」「麻縄/綿ロープ」から始まる。
麻縄は綿ロープより肌への当たりが強く、締まり方も違う。扱いに慣れた人には表現の幅が広がる道具だが、慣れていない人が使えば跡が残りやすい。店がこれを看板の一行目に置いているのは、縛りを主役にする客を想定しているということだ。逆に言えば、縄に興味のない人にとっては、この店の強みの半分が見えないことになる。
道具の持ち込みも可能で、「物により料金が発生いたします」とある。自分の縄や道具にこだわりのある人は、受付で相談するといい。
本題:規約の長さが語ること
料金表の最後に「MEMBERSHIP TERMS / SAFETY COUTIONS」という欄がある。ここが、この店の「ただひとつ」の根拠に一番近いと思う。いくつか抜き出す。
- 「首締め・窒息など死の危険性が起こりうるプレイは行っていません」
- 「黄金の塗りや食・針プレイ・刃物・締め技・キャットファイト及び締め技なども厳禁となります」
- 「AF:女の子によりNGの場合、又はサイズの大きさによりお断りする場合があります。一度のプレイで2回戦のAFはご遠慮ください」
- 「アナルパール:アナルパールを後ろに挿入後、そのアナルパールを膣へ挿入することは禁止」
- 吐くまでのイラマチオ責めは30,000円の対象
- 「心無い暴言:プレイとはみなされない暴言による言葉の暴力行為は(中略)即時切り上げ、清算対象」
ほかにも、飲尿・尿掛けは女の子によって掛けのみの場合があるので電話で確認すること、尿瓶の尿を掛ける行為は首から下のみで髪や顔は禁止、即尺は衛生面や真性の方は断る場合がある、と続く。
これを読んで「禁止だらけで窮屈な店だ」と感じる人もいるだろう。谷口の読みは逆だ。SMはもともと、どこまでやっていいかの線を二人で共有して初めて成り立つ遊びだ。その線が曖昧な店では、客は相手の反応を探りながら遠慮するか、逆に踏み越えてしまうかのどちらかになりやすい。線が細かく書いてある店では、線の内側は安心して使える。
特に「アナルパールを後ろから前へ移さない」「尿瓶の尿は首から下まで」といった書き方は、衛生と体へのリスクを実際に想定していないと出てこない。現場で起きたことを一つずつ規約に足していった結果に見える。2010年から積み上げた運営の跡が、この長さに出ている。
「M女専門」をどう受け取るか
シティヘブンの紹介では、コンセプトは「昨日までなかった出会いがある」で、心からのM気質を持つ女性との時間を打ち出している。料金表の冒頭には「大人を虜にする未知の世界への招待状」、その下に「『…こんな私、誰も知らない』あなたと交わる時間が、いちばん新しい秘密。」というコピーが入る。
M気質が本物かどうかは、外から確かめようがない。宣伝の言葉をそのまま信じる必要はない。ただ、規約の作りから読み取れることはある。イラマチオは「女の子任意」と明記され、AFも飲尿も女の子ごとに可否が違い、事前の電話確認を求めている。つまり「M女だから何でも受け入れる」という売り方はしていない。女性ごとの線を前提にしたうえで、その内側で支配と服従の関係を楽しむ店、というのが規約から見える姿だ。
公式サイトにはこうも書かれている。「SMクラブには調教と言う2文字がありますが、全てのSMクラブの調教には心の通った愛のあるものでないといけません」。広告の一文としては照れくさいが、規約の中身と矛盾していない点は評価していい。
初めて行く人への段取り
公開情報から組み立てる、初回の段取りは次のとおり。
- 予約時に女性ごとのNGを確認する。AF・飲尿・イラマチオなどは女性によって可否が違うと規約に書かれている。希望があるなら電話で先に聞く。
- 時間は90分から考える。無料のビギニングオプションが付き、縛りに時間を割いても余裕がある。
- 入会金5,000円を忘れない。初回は表の金額にこれが乗る。
- シャワーの段取りを知っておく。規約によると、体は女性が洗う決まりで、ホテル入室後は待つように書かれている。先に一人でシャワーを済ませると、即尺の扱いになると注意書きがある。
- 持ち込みたい道具があれば受付で相談。道具によって料金が変わる。
まとめ
| 項目 | 評価 | ひとこと |
|---|---|---|
| 立地 | ★★★★☆ | 鶯谷南口3分。ホテルの選択肢が多い街 |
| 料金の分かりやすさ | ★★★★☆ | 30分ごと1万円。長時間でも割安感は控えめ |
| 道具・縛り | ★★★★★ | 麻縄が看板、200種類以上の道具をうたう |
| 規約・安全 | ★★★★★ | 禁止事項と理由がここまで具体的な店は少ない |
| 初心者の入りやすさ | ★★★☆☆ | 初心者プランはあるが、規約は読んでから行くべき |
「辿り着くのは、ただひとつのSMクラブ」という看板を、谷口は文字どおりには受け取らない。ただ、料金表の下に続く長い規約を読むと、この店が何を守るために線を引いてきたのかははっきり分かる。首締めはしない、暴言は打ち切る、女性ごとにできることは違う。その線の内側で縄と道具を思い切り使う、というのがArrestの作りだ。
SMに興味はあるが、どこまでやっていいのか分からなくて踏み出せない人には、規約が長い店から始めることを勧めたい。線がはっきりしている分、迷わずに済む。逆に、何でもありの刺激を求める人には、この店の規約は物足りなく感じるはずだ。合うかどうかは、料金表より先に規約を読めば分かる。