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湯島の個室マッサージ店で12歳タイ人少女に性的サービス 経営者に拘禁刑6年・罰金200万円を求刑

東京・文京区湯島の個室マッサージ店で当時12歳のタイ国籍の少女に性的サービスをさせたとして、児童福祉法違反などの罪に問われた元経営者の公判が2026年8月6日、東京地裁で開かれた。検察側は論告で「パスポートを容易に確認できたのに年齢を確認しなかった」と指摘し、拘禁刑6年・罰金200万円を求刑した。被告側は人事を元店長に任せていたとして無罪を主張している。判決は9月15日に言い渡される予定。少女の母親は6月29日、バンコクの裁判所で人身取引の罪により禁錮7年6月の判決を受けている。

湯島の個室マッサージ店で12歳タイ人少女に性的サービス 経営者に拘禁刑6年・罰金200万円を求刑

8月6日、東京地裁での論告求刑

東京都文京区湯島の個室マッサージ店で、当時12歳だったタイ国籍の少女に性的サービスをさせたとして、児童福祉法違反などの罪に問われた元経営者・細野正之被告(52)の公判が2026年8月6日、東京地方裁判所で開かれた。産経新聞、テレビ朝日系(ANN)、共同通信、毎日新聞などが同日から7日にかけて報じた。

検察側は論告で、被告が拘禁刑6年、罰金200万円に処されるべきだと求刑した。判決は2026年9月15日に言い渡される予定。

論告で検察側は、被告が少女のパスポートを容易に確認できる立場にありながら年齢を確認しなかったと指摘。「極めて悪質」であり、多数の客から性的行為を受けた被害者の精神的影響は深刻だと述べた。

一方、被告側は最終弁論で、従業員の募集・採用やパスポートの確認といった人事に関わる事柄は元店長にすべて任せていたと主張し、少女の年齢については「まったく知らなかった」として無罪を求めた。被告本人は「一日も早く社会復帰したい」と述べたと報じられている。

なお、元店長でタイ国籍のプンシリパンヤ・パカポーン被告(39)も児童福祉法違反の罪で起訴され、別途公判が続いている。両者の主張がどこまで食い違っているかは、現時点の報道からは確定できない。

事件の経緯――来日から保護まで

各社の報道を総合すると、事件の経緯は次のように整理できる。

時期 出来事
2025年6月下旬 少女(当時12歳)が母親とともにタイから来日
来日から約2週間後 母親が「迎えに来るまで働くように」と言い残して出国
2025年6月〜11月ごろ 湯島の個室マッサージ店で稼働。約1カ月で約60人の客を相手にしたとされる
2025年11月上旬 経営者が労働基準法違反(最低年齢)の疑いで逮捕される
2026年6月29日 バンコク刑事裁判所が少女の母親(30)に禁錮7年6月の判決
2026年8月6日 東京地裁で論告求刑。拘禁刑6年・罰金200万円
2026年9月15日 判決予定

報道によれば、少女は店の厨房に敷いた布団で寝起きしていたという。約束の期日を過ぎても母親が迎えに来なかったため、少女は自ら東京出入国在留管理局に出向き、そこで保護された。客の数については「約60人」「61人」と報道により幅があり、ここでは断定を避ける。

売上の一部は、店側からタイにいる母親の口座へ送金されていたとされる。母親側の刑事責任はすでにタイで問われ、6月29日の一審判決で禁錮7年6月が言い渡された(本サイトでも既報)。

争点は「年齢を知っていたか」

この裁判の争点は、事実関係そのものよりも、被告が少女の年齢を認識していたか、認識できたかに絞られている。

児童福祉法が禁じる「児童に淫行をさせる行為」は、相手が18歳未満であることの認識が問われる。被告側は「元店長に任せていた」という分業の主張で、この認識を否定している。これに対し検察側は、パスポートという客観的な確認手段が手元にあった以上、確認しなかったこと自体が責められるべきだという構成を取った。

つまり、争いは「知らなかった」と「知ろうとしなかった」の距離にある。この距離をどう評価するかが、9月15日の判決の実質的な中身になる。

求刑の枠――なぜ「6年」なのか

児童福祉法第60条第1項は、同法第34条第1項第6号(児童に淫行をさせる行為)に違反した者を10年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科と定めている。今回の求刑「拘禁刑6年・罰金200万円」は、この法定刑の枠内に収まっている。

いくつか補足しておく。

  • 「拘禁刑」は、2025年6月1日に施行された改正刑法で、従来の懲役と禁錮を一本化した刑種である。この事件は施行後の行為が対象になるため、報道でも「懲役」ではなく「拘禁刑」と表記されている。
  • 罰金の併科は、営業として収益を上げていた事案で選択されやすい。今回の200万円は上限300万円に対して約3分の2にあたる。
  • 起訴罪名には、性風俗店の営業禁止区域での営業にあたる風営法違反も含まれている。湯島は店舗型性風俗特殊営業が認められない区域であり、店の存在自体が違法だった。

背景――日本には「人身取引罪」という罪名がない

この事件が繰り返し「人身取引」と呼ばれながら、起訴罪名にその言葉が現れないのは、日本の刑法体系に包括的な人身取引罪が存在しないためである。

2005年の刑法改正で人身売買罪(刑法第226条の2)が新設されたが、条文は「人を買い受けた/売り渡した」という行為類型を中心に組み立てられており、今回のように「連れて来て、店に置いて、働かせ、送金する」という一連の流れ全体を1つの罪でとらえる設計にはなっていない。

結果として、実務では次のような罪名の積み上げが行われる。

  • 児童福祉法違反(淫行をさせる行為)
  • 風営法違反(禁止区域営業、無届営業など)
  • 労働基準法違反(最低年齢、強制労働)
  • 入管法違反(不法就労助長)
  • 売春防止法違反(場所提供、周旋、契約)

この事件でも、逮捕時の被疑事実は労働基準法違反(最低年齢)で、起訴段階では児童福祉法違反と風営法違反が前面に出た。同じ行為が、捜査の段階ごとに別の法律で切り取られているわけである。

米国務省が2025年9月に公表した人身取引報告書(TIP Report)で、日本は引き続き第2階層(Tier 2)に分類された。同報告書は、日本政府が撤廃のための最低基準を十分には満たしていないものの相当の努力を行っていると評価する一方、労働搾取目的の人身取引および性的搾取目的の児童の人身取引について、刑事捜査・訴追の件数が問題の規模に比べて低水準にとどまっていると指摘している。

母親にタイで言い渡された禁錮7年6月と、日本での求刑6年。単純な比較はできない。適用される法律も、問われている立場も異なるからだ。ただ、少女を送り出した側の刑期と、受け入れて稼働させた側への求刑が同じ桁で並ぶという事実は、日本側の量刑の枠が「人身取引」という言葉の重さにどこまで対応できているのかという問いを、そのまま可視化している。

一方で、この事件が明るみに出たきっかけが、行政の摘発でも通報でもなく、12歳の少女が自分の足で入管に歩いて行ったことだった点も見落とせない。約1カ月、60人前後の客を相手にする稼働が、都心の一区画で誰にも止められないまま続いていた。判決は9月15日に言い渡される。


本記事は産経新聞、テレビ朝日系(ANN)、共同通信(京都新聞掲載)、毎日新聞、東京新聞、および在日米国大使館公表の「2025年人身取引報告書(日本に関する部分)」等の報道・公表資料をもとに構成しています。事実関係は公判で争われており、判決確定前の内容を含みます。