「新宿角海老」の看板を下ろして、何を名乗り直したのか
the SPA KADOEBI は歌舞伎町1丁目のソープランドだ。掲載カテゴリは「ソープ(激安/新宿・歌舞伎町)」。紹介文の冒頭にはこう書いてある。
「the SPA」これが新しいKADOEBIスタイル!! これまで長年「新宿角海老」としてご愛顧頂いておりました当店が装いも新たにリニューアルOPEN!!
つまり、もとは「新宿角海老」。角海老グループの新宿店が、屋号を漢字から英字に替えた店である。当サイトでは同じ系列で、渋谷の旧角海老が「Mirage」へ改名した件を扱った。あちらはグループ名をロゴの下に小さく残すだけで、名前そのものを捨てていた。
新宿のこの店は違う。「KADOEBI」をローマ字にして店名の真ん中に残し、頭に「the SPA」を足した。系列の名前は捨てずに、読み方だけを変えたわけだ。渋谷でソープを探す客と違って、歌舞伎町でソープを探す客は角海老という名前を知っている。知っている名前を捨てる理由はない。ただ、漢字三文字の「角海老」は老舗の重さと一緒に、昭和の匂いも連れてくる。英字にするのはその匂いだけを抜く作業だと読める。
そのうえで、この店が掲げるコピーは二つある。
- 「新宿でもTOPクラス!!ハイクオリティーな女性ばかりの人気店です♪」
- 「歌舞伎町で一番正直で安心して遊べるお店」
前者は測れない。後者は測れる。今回は後者だけを物差しにする。
歌舞伎町1-16-10——「客引きはいない」と書く店
住所は東京都新宿区歌舞伎町1-16-10。案内は「JR新宿駅東口より徒歩5分、西武新宿駅より徒歩3分、地下鉄丸の内線新宿駅より徒歩5分」。西武新宿駅がいちばん近いという書き方で、JR東口からは靖国通りを渡って歌舞伎町の中へ入っていく位置関係になる。
公式サイトのトップには店頭の写真が使われている。生成りの縦板を組んだ外壁に、金色に光る菱形のロゴ。間口の奥に赤い敷物が覗く。歌舞伎町のソープ街にありがちな電飾の派手さはなく、和風旅館の玄関を現代風にしたような作りだ。「the SPA」という名前は、少なくとも外観とは噛み合っている。
この店の掲載文で私が最初に目を留めたのは、料金でも女性の紹介でもなく、次の一段だった。
※お客様へのお願い※ 当店は客引き行為は一切行っておりません、 歌舞伎町では悪質な客引きが大勢おりますので、 当店の名を騙りお声かけられても無視をして御来店くださいませ。
「一番正直」と言われても何のことか分からないが、この注意書きを読むと意味の一部は見えてくる。歌舞伎町という街では、店に辿り着く前の段階で客が損をする。店が言う「正直」の半分は、自分のことではなく街の不正直さとの対比なのだろう。
料金表を割り算する——早朝の19,000円は何割引か
では本題の料金表だ。ヘブンの料金ページに載っているのはこれだけである(トータル料金表記)。
| コース | 時間帯 | 料金 | 分単価 |
|---|---|---|---|
| スタンダード 70分 | 6:00〜9:00(早朝割引) | 19,000円 | 271.4円/分 |
| スタンダード 70分 | 9:00〜24:00 | 24,000円 | 342.9円/分 |
| ロング 90分 | 6:00〜9:00(早朝割引) | 26,000円 | 288.9円/分 |
| ロング 90分 | 9:00〜24:00 | 31,000円 | 344.4円/分 |
| 男磨き 110分 | — | 44,000円 | 400.0円/分 |
| 指名料 | — | 1,000円 | — |
まず早朝割引。70分も90分も、引かれる額は同じ5,000円だ。70分では24,000円→19,000円で約20.8%引き、90分では31,000円→26,000円で約16.1%引き。クーポン欄にも「21%OFF 70分24,000円→19,000円」とあるが、これは早朝割引をクーポンの形に載せ直したもので、別の割引が重なるわけではない。
ここで一つ目の「正直」が確認できる。この店は割引の幅を、いちばん大きく見える70分の数字で宣伝しているが、その数字自体は嘘ではない。21%は70分で計算すれば本当に21%だ。90分で同じ率は出ないが、それを90分の宣伝に流用してもいない。
二つ目。70分と90分の差は、通常料金でも早朝料金でも7,000円。差分の20分だけを切り出すと350円/分になる。通常時間帯なら70分の単価342.9円/分とほぼ同じで、長くしても割安にも割高にもならない。延長分を素直に時間で売っている設計だ。
三つ目が「男磨きコース」110分44,000円。ここだけ単価が400円/分に跳ね上がる。90分の通常料金31,000円との差は13,000円で、差分20分の単価は650円/分。70→90の延長が350円/分だったのに、90→110の延長はその倍近い。しかも男磨きコースには早朝割引がない。
指名料1,000円は、ソープとしては明確に安い部類に入る。2,000〜3,000円を取る店が珍しくない中で、ここを低く抑えているのは実額で効く。早朝の70分に指名を付けても総額20,000円で収まる計算になる。
「春のお試しコース」と、店頭看板の50分
料金表を一通り割ったあとで、ピックアップ情報の欄を見ると、料金表にない数字が出てくる。
お得な50分コースも御座います!! 春のお試しコース御座います!!当店を初めてご利用いただくお客様にはお試しコース50分18000円でお楽しみ頂けます!!但しマ〇トサービスは御座いま…
50分18,000円は360円/分。早朝の70分(271.4円/分)よりも、通常の70分(342.9円/分)よりも単価が高い。そのうえ初回限定で、マットサービスは付かない。総額が安いだけで、単価で見ると「お得」ではない。ただし、マットがないことを告知文の中で自分から書いている点は評価していい。都合の悪い条件を省かずに載せているからだ。
引っかかるのは二点ある。ひとつは、いまは10月なのに見出しが「春のお試しコース」のままであること。もうひとつは、公式サイトのトップに使われている店頭写真に写り込んでいる立て看板の数字だ。私の目には「50分 17,000円」と読める。ヘブンの告知は18,000円である。
写真は撮影した時点のものだから、看板の金額が当時の料金で、その後1,000円上がったと考えるのが自然だろう。どちらが現在の正しい料金かは、掲載ページの範囲では確定できない。
朝6時の店は、誰のために開いているのか
この店のいちばんの個性は、料金よりも営業時間にある。6:00〜24:00(最終受付23:00)、年中無休。予約は当日分が朝6時から、前日予約は朝7時から受け付け、ただし女性の出勤確定次第、と書かれている。
歌舞伎町のソープで朝6時に開く店は多くない。始発が動き出す時間帯で、夜通し飲んでいた人間と、これから出勤する人間が駅ですれ違う時刻だ。早朝割引の6時〜9時という枠は、その両方を拾う設計になっている。夜勤明けの人、夜通し遊んだ流れの人、出勤前に一時間半を使える人。
週間出勤表を見ると、6時や6時半から始まる枠に複数の女性の名前が並ぶ日がある。写メ日記の投稿時刻も、私が確認した日は6時34分、7時01分、8時45分と朝の時間帯に集中していた。「おはようございます」で始まる投稿が並ぶソープの日記欄というのは、それだけで少し珍しい光景だ。早朝枠が名目だけでなく、実際に人を揃えて回している枠であることは、この出勤表と日記の時刻から読み取れる。
もう一つ、出勤表で気づくのは年齢がすべて「?歳」表記になっていることだ。身長とスリーサイズは載っているが、年齢は伏せてある。年齢を盛る店が多い業界で、書かないという選択は、それはそれで一つの態度だと思う。少なくとも、書いた数字が嘘だと後で言われることはない。
新人情報には9月に入店した女性が6名並んでいる(9/6〜9/18)。リニューアル後も入れ替えは動いている、ということだ。
早朝割とU-23割——「誰を安くしているか」で店が見える
割引は二本立てだ。ひとつは前述の早朝割引(イベント欄の掲載開始は2025年9月5日)。もうひとつが「U-23割引キャンペーン」(同2025年1月2日〜)。こちらは来店時に身分証で23歳以下を確認する、と告知にある。割引額はヘブンの掲載からは読み切れなかったので、ここでは断定しない。
どちらも「キャンペーン」の体裁だが、掲載開始から一年以上続いている。実態としては常設の料金体系と見ていい。
この二つの割引を並べると、店がどこに客を求めているかが見える。時間帯で言えば朝、年齢で言えば若年層。どちらも、歌舞伎町のソープにとって本来は取りにくい客である。夜の歌舞伎町に放っておいても来る層ではなく、放っておけば来ない層を値段で呼んでいる。
まとめ
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 立地・アクセス | ★★★★☆ | 西武新宿駅3分・JR東口5分。客引き注意の明記は安心材料 |
| 料金の分かりやすさ | ★★★★☆ | トータル表記で70分/90分の延長単価は素直。110分の中身だけ不明 |
| 早朝のコスパ | ★★★★★ | 70分19,000円(271.4円/分)+指名1,000円。朝に動ける人には最有力 |
| 告知の正確さ | ★★★☆☆ | 「春の」お試し表記の残存、店頭看板との金額ズレ |
| 個性 | ★★★★☆ | 朝6時開店の早朝枠を実際の出勤で回している |
「歌舞伎町で一番正直」という看板を料金表で確かめると、料金表本体は正直だった。トータル表記、指名料1,000円、早朝割の5,000円引きは70分でも90分でも同額、宣伝の「21%OFF」も70分で計算すれば数字どおり。延長20分の単価350円/分も、上げも下げもしない素直な設計だ。
正直さが崩れているのは料金表の外側である。季節を過ぎた「春の」お試しコース、写真の看板と1,000円ずれた50分料金、中身の説明がない110分の男磨きコース。どれも悪意というより手入れの問題だが、「一番正直」を名乗るなら、こうした周辺の古さこそが看板の信用を削る。
使い方ははっきりしている。朝6時〜9時に、70分の早朝割で、指名を付けて総額20,000円。この店の料金表がいちばん強く、いちばん正直に機能するのはこの一点だ。50分のお試しや110分のコースを選ぶなら、電話で現在の料金と内容を一度確かめてからにしたい。それを確かめさせてくれるのも、名前を騙る客引きではなく、店に直接かけた電話のほうである。